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3)心理的変化の計測結果
動揺暴露時に聞き取り調査された被験者の気分、乗り心地、酔いの程度に関しては、生理的変化の解析のために用いられる。ここでは、動揺暴露前後に実施されたSD法によるアンケート調査の解析結果について述べる。

 

a)心理的変化の因子分析法による解析および結果
従来、SD法によるアンケート調査と対をなすと考えられている因子分析法によって解析したアンケート調査結果を表2.23−5に示す。被験者の動揺刺激に対するイメージから、どのような形容語対が乗り物酔い、乗り心地に寄与するかを第1から第4因子まで求めたものであり、因子負荷量の大きな値を太字で示してある。表に示されるように、第1因子では、「静かな一騒々しい」の因子負荷量が高く、”空間環境要因”との解釈もできるが、「いきいきした一ぐったりした」、「軟らかい一硬い」、「優しい一怖い」等の因子の因子負荷量もほぼ同等に高く、乗り心地に対する”総合的評価”と解釈することもできる。また、第2因子に関しては更に多くの異なったイメージに対する因子負荷量が高いことから、この群も”総合的評価”を表していると考えることができる。一方、第3因子に関しては、「安心な一不安な」、「落ち着いた一せかせかした」、「うきうきした一がっかりした」の因子負荷量が高く、この群は”心理的要因”を表すと考えられる。このように、必ずしも各群が納得のいくような分かれ方となっていない。この理由の一つとしてはアンケート調査票に採用した形容語対の選択過程に問題のあったことが考えられるが、一般に因子分析法は、同一被験者に対して複数の評価対象を評定させて、被験者が評価対象に抱いているイメージの違いを明らかにできる解析法として用いられる手法であって、評価対象に何らかの従属関係がある場合には必ずしも正しい解析を行えないためと考える。

 

b)乗り心地の総合評価に対する線形重回帰モデルの適用
アンケート調査票に掲げてある4要因(空間環境、動揺刺激、生理的、心理的)による線形重回帰分析法で乗り心地の同定を試みた。
アンケート調査票の7段階の評定結果を【0,1】に正規化した後、線形重回帰式

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を用いて、乗り心地の総合評価を表現するモデルを考えた。ここに、eは、乗り心地の総合評価値、g({Si})は、評価項目Siの重要度、h(Si)は被験者による評価項目Siの評価値を表す。
この線形重回帰モデルを用いて多数の被験者による評価値より、各評価項目の重要度を定める。ここでは、重要度g({Si})は、j番目の評価者(被験者)乗り心地の総合評価をdjとし、回帰モデルによる推定値をejとするとき、ejとdjの差の自乗平均誤差σ2

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が最小となるように同定する、モデルから分かるように、回帰分析は統計的手法であり、この方法に

 

 

 

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